いずれも、中国人は名称すら知りません。当然、ローカル系の飲食店で提供するところはありません。提供するのは、せいぜい一部の日本料理店ではないかと思います。

 冷やし中華と中華丼の発想の元になったと思われるメニュー「冷麺」と「蓋澆飯」は確かに中国に存在します。しかし、天津飯に関しては原形と思しきメニューも浮かんできません。諸説あるものの、そもそもなぜ「天津」という地名が付いたのかもよく分かっていません。

 なお、中国人の知り合いに天津飯がどんな料理なのか説明するため、中国の検索サービス「百度(バイドゥ)」で「天津飯」と入力して画像検索をかけたところ、漫画の「ドラゴンボール」に出てくる天津飯しかヒットせず、説明するのに非常に困りました。

「現地に合わせた工夫は当然必要」

 こういった日本人が勝手に中華料理として追加しているメニューを、中国人たちはどう思っているのでしょうか。

 知人の中国人たちに話を聞いてみたところ、結論から言うと誰もが「おいしければそれでいいんじゃない?」という具合で、問題視するような声は全く聞かれませんでした。

 質問に答えてくれた1人は、「同じ中国国内でも、地方によって料理の味付けや素材は違う。その土地に応じた工夫は必要だ」と言います。日本人が日本人の舌に合わせて料理の形態を変化させるのはむしろ自然なことだと理解を示しました。

 中国の料理をベースに日本人が発明した料理を「中華料理」と呼ぶことについては、「ちゃんと中華料理に敬意を払ってくれているような気がする。なにより、どこかの国みたいに中華料理も自分の国が発祥だなんて言わないのがいい」との感想を洩らしていました。