昨年後半から株価が堅調に推移し、一部からはデフレ脱却という声も聞かれるようになってきた。一方、今回の株高は米国の好景気に連動したものであり、アベノミクスの成果ではないとの見方も根強い。前回の好景気である小泉改革とアベノミクスをあらためて比較し、景気回復の実態について探った。

当初のアベノミクスは小泉改革に近いスタンス

 アベノミクスの中核となっている政策は、言うまでもなく量的緩和策である。この政策は、日銀が積極的に国債を購入することでマネーを大量に供給し、市場にインフレ期待(物価が上昇すると皆が考えること)を生じさせるというものである。

 期待インフレ率が高まると、実質金利(名目金利から期待インフレ率を引いたもの)が低下するので、理論上、企業が資金を借りやすくなり、設備投資が伸びるというメカニズムだ。日本では不景気が長引き、デフレと低金利の状態が続いていた。名目金利はこれ以上、引き下げることができないので、逆に物価を上げることで、実質的な金利低下を狙ったわけである。

 だが、物価が上がる見通しがついただけでは経済は成長しない。持続的な成長を実現する方策として打ち出されたのが成長戦略であった。当初のアベノミクスでは、硬直化した日本経済の仕組みを変革すること(分かりやすい言葉で言えば構造改革)を成長戦略の中核と位置付けており、小泉改革に近いスタンスだった。

 しかし、構造改革への反発が予想以上に大きく、安倍氏は徐々に構造改革を口にしなくなった。2014年以降は、産業統制的な政策を打ち出すケースが多くなり、最終的にアベノミクスは、金融政策と統制的な経済政策の2つに収束することになった。

 一方、小泉改革は、当初から市場原理主義を全面に押し出した政策であり、日本では珍しく大胆に規制緩和が実施された。しかし、改革に対する反発が徐々に大きくなり、右腕であった竹中平蔵総務大臣が辞任した2005年あたりから、構造改革はフェードアウトしていった。