(文:冬木 糸一)
作者:アビゲイル・タッカー 翻訳:西田美緒子
出版社:インターシフト
発売日:2017-12-27
先日(2017年12月)のペットフード協会の発表によると、全国犬猫飼育実態調査で、調査開始以来、はじめてネコの推定飼育数が犬の数を上回ったという。人類の相棒は犬じゃなくてネコだった──というわけではないけれども、少なくともペットの王は今やネコに移り変わりつつあるといえるのではないだろうか。飼いやすいというのもあるが、ネットをみればネコの画像や動画はいつだって大流行で、あっという間に万を超える閲覧、再生数を叩き出し人間の心を鷲掴みにする。
いったいネコの何が人間をそこまで惹きつけるのだろうか。犬は狩りもすれば防犯にも役に立ち、飼い主が苦しんでいれば寄り添って慰めてくれる。お座りだろうがお手だろうがちょちょいのちょい。一方、ネコはどうだ。お手ができるネコが現れれば奇跡のような扱いを受け、好き勝手に生活し、役に立つこともなく、人間がおネコさまに奉仕するかのようだ。そのうえ、ネコは生態系を致命的なまでに破壊し、世界の侵入生物種ワースト100にまで選出されている。
僕はずっと犬派なので若干ネコへの視線が厳しくなったが、本書はそんなおネコ様の秘密──どのようにして飼いならされたのか、なぜ人間は特に役に立つわけでもないネコを飼い始めたのか、なぜ犬よりも飼われ、ネットでバカ受けするのかなど、ネコと人の歴史をそもそもの歴史と生態から問い直し、サイバースペースを支配する理由まで解き明かす一冊である。
ネコに捕食される側だった
さて、今でこそ大量に猫をペットにしている人類だが、かつてはネコにむしろ捕食される側だった。600万年から700万年前の猿人は肉はほとんど食べず、逆に多様な生きものたちに捕食されていたが、その捕食者の筆頭がネコ科の動物だったのだ。ヒト属のものとされる世界最古の頭蓋骨は、絶滅した巨大チーターのピクニック場のような場所で発見されている。