「長幼の序」を逆手に

 ところで「長幼の序」の文化は障害になるばかりではない。むしろ、それを逆手にとって年配者を活用することもできる。

 ホテルのフロントや営業の仕事に他社で定年を迎えた人を採用したところ、客とのトラブルが大幅に減ったという。年配の社員をクレーム処理の担当に据えているところもある。彼らの経験がものをいっているだけでなく、年配者ゆえに客も一目置くという面があるようだ。

 またベンチャー企業のなかには、若い経営者の補佐役として大企業の管理職経験者を採用している例がある。とくに対外関係では若手経営者だと軽く見られがちだが、年配の補佐役が付いているとそれが補える。しかも経営者と親子ほど年齢が離れていると互いに相手の立場が理解しやすく、人間関係も良好に保てるそうだ。

 中高年になると仕事の能力が低下すると信じられているが、人間の知的能力は使い続けているかぎり、いくつになっても伸長するといわれている。ところがわが国では年功序列があるため、彼らの意欲と能力を十分に生かしきれていない。発想さえ変えれば年長者を敬う文化は障害にならないばかりか、むしろチャンスを広げることにもつながる。

 わが国の人口が減少するこれからの時代に中高年は貴重な労働力であり、彼らをどれだけ活用できるかが企業にとっても、社会にとっても重要な課題である。「不可欠な存在である」という意識を本人も周囲も共有できるようにすれば、彼らの潜在的な意欲と能力を引き出せるに違いない。