私は30代で国政選挙の候補者になった。最初は、1985年、参院選挙に比例代表選挙が導入された時だった。その後、中選挙区制時代の衆院選挙に10年間で3回立候補した。都合4回、いずれも落選だった。
最初に当選したのは、95年の参院選である。比例代表選挙での当選だった。続いて2001年にも当選した。10年以上の候補者生活であった。この間の演説回数は数千回に及ぶだろう。
最初のうちは苦労したものだ。何しろ知名度ゼロ、党の幹部でもない。自分自身でも、“どこの馬の骨か分らない”と思われているだろうな、と思っていた。上から目線の演説など、できる能力もなければ、立場でもなかった。最初の頃は、「よく言えば立て板に水、率直に言えば早口すぎて、何を言っているのか分らない」と言われたものだった。
私は腹の中で思ったものだ。「考えてきたことを早くしゃべらないと台詞を忘れてしまうから仕方がないよ」と。余裕などまるでなかった。余裕が出てきたのは、いつ頃のことか。記憶をたどれば、衆院選挙に2回目の立候補をした時期ぐらいだと思う。
落語でも「間が大事」と言われる。演説も一緒だ。演説で5秒間黙っていることは、あまりにも長く感じられてほとんど不可能である。「間」といってもせいぜい2秒から3秒だ。だが、これが難しいのである。