PDCAサイクルは、下手な運用をすると「裸の王様」を生むシステムになりかねない。王様がぶちあげたプランを部下たちが必死になってうまくいったように見せかけ(あくまで“みせかけ”)、「王様のプランは素晴らしい! おかげで万事うまくいきました!」と評価を甘々にし、誰も真の意味での改善に乗り出さないまま、ウソにウソを塗り固める行為を繰り返すことになる。

 もちろん、PDCAサイクルを訴えるさまざまな本には、そうならないようにするための注意点がいくつも書かれている。しかしPDCAという4文字の中に、ある重要なステップが具体的に組み込まれていないことが、誤用され、「裸の王様」を各所で生む原因になりはしないか、と懸念される。

 その重要なステップとは何か。「観察」なのだ。

「観察」は科学の不可欠要素

 科学の方法論は、5段階で表現できる。観察、推論、仮説、実験、考察。PDCAサイクルによく似ているが、「観察」を組み込んでいることがとても重要なのだ。

 たとえば「喫茶店を始めたいな」と構想を持ったとする。PDCAサイクルではいきなりプラン作りを始めてしまいそうだが、科学ではまず「観察」から始める。人気のある喫茶店はどんな店構えで、どんな内装で、どんなメニューをそろえていて、どんな接客をしているのか。徹底して観察を行う。

 そうするうちに、「流行る喫茶店にはこういう法則があるのではないか」と「推論」が湧いてくる。

 その推論に基づいて、「予算の中で行うなら、こうした喫茶店にすれば若者にも人気の喫茶店になるのではないか」と「仮説」を立ててみる。これがPLAN(計画)に相当する。

 そして実際に喫茶店を始めてみる。「実験」だ。これはDO(実行)に相当する。

 その結果、どうも若い客が少ない。よくよく考えたら、この町はお年寄りが多くて、若者が通るようなところでもなかった、ということに気がついたりする。「考察」だ。これはPDCAサイクルならCHECK(評価)に相当する。