9月20日、日の出とともにカテゴリー4のハリケーン「マリア」が上陸したカリブ海の小島プエルトリコ。多くの建物が倒壊し、全島が停電。通信も飲料水もなく、壊滅的被害を受け、34人が死亡する惨事となった。
事態は深刻を極め、最大都市サンフアンの市長が連邦政府の対応の遅れへの不満を発言したことから、ドナルド・トランプ米大統領は彼女のリーダーとしての資質や自助努力の欠如を非難。
メディアの報道姿勢にも「プエルトルコの人々よ、フェイクニュースを信じないで」などとツイートした。
10月3日、ようやくトランプ大統領はプエルトリコ入り、サンフアン近郊の住宅地視察など行ったが、12日、「電気やインフラはハリケーン前から「disaster」だった」「連邦緊急事態管理庁、軍、救援隊も永遠にいるわけではない」とツイート・・・。
米国籍はあっても投票権はなし
1493年、スペインのイサベル女王の支援を受けたクリストファー・コロンブスに“発見”され、19世紀末の米西戦争までスペインの支配を受けてきたプエルトリコ。
その350万人ほどの住民の大半はスペイン語ネイティブで、米国籍は持つが、大統領選の投票権はなく、ほとんどの場合、連邦所得税が免除されている自治的未編入領域「Commonwealth」という特殊な政治的地位にある。
2015年にはデフォルトに陥り、今年5月、連邦地裁に破産申請。6月の州昇格を問う住民投票では支持票97%も、反対派野党のボイコット呼びかけもあり投票率は23%だった。今年のWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)では、米国代表がプエルトリコ代表と決勝戦を戦っている。
こうした出来事からも歴史からも、「本土」とプエルトリコの間には、カリブ海という地理的隔たりだけではない微妙な距離感を感ぜずにいられない。
カテゴリー1から5へと急速に発達した「マリア」がグアドループを襲いプエルトリコへと向かっていた頃、トランプ大統領は国連本部で就任後初の演説を行っていた。
「自国や同盟国を守らねばならなくなれば、北朝鮮を『完全に破壊』するしか選択肢はなくなる」
繰り返しミサイルを発射する金正恩朝鮮労働党委員長を「Rocket Man」と呼んだ非難演説は、その後、リ・ヨンホ北朝鮮外相からの「太平洋上での水爆実験」との言葉も呼んだ。