パクリタキセルの副作用は骨髄抑制、脱毛、アレルギー反応、しびれのような末梢神経障害、ドセタキセルの副作用は骨髄抑制、脱毛、浮腫、発疹、アレルギー反応などです。
「私はかつてパクリタキセルやドセタキセルの臨床試験を手がけたことがあり、これらの薬の効果や副作用はある程度はわかっているつもりでした。ところが、自分自身が使ってみると、これまで担当した患者さんでは経験したことがないようなひどい副作用が起こりました。特にここまでひどい下痢は経験したことがありませんでした」と唐澤さんは話します。
こうした経験から、標準治療とされている薬物療法は副作用の出方に大きな差があり、誰でも同じように受けられる治療ではないということをあらためて実感しました。
そして、効果的で安全な薬物療法を実施するためには、「一部の患者さんについては標準を踏まえた上で、患者さんの特性や状態に合わせてがんの薬物療法専門医(腫瘍内科医)が薬剤を調整するなど、きめ細かい配慮が必要になりますね」と語ります。
腹痛の原因を探るための血液検査では、支持療法としてステロイドを飲んでいたために炎症反応が見られませんでした。しかし、「骨髄抑制が起こって、好中球が304まで落ちていました。さらに腹部のCT検査で痛い場所に一致して憩室(大腸の壁が外側に膨らむ状態)がいくつも映っていたので、憩室炎の状態になっていると判断しました。もうこれ以上、継続して抗がん剤を使うのは無理だと感じました」。
入院中に看護師の応対や言葉遣いにストレスを感じた
唐澤さんが緊急入院したのは乳腺科の病棟ではなく、混合病棟の少し高額な個室でした。そこしか空いていなかったからです。多くの科のさまざまな病気の患者さんが入院する混合病棟ということもあって、病棟の看護師はがんや薬について詳しいわけではありませんでした。
そうした看護師から伝えられる乳がんの情報が古かったり、腸のけいれんによる激しい痛みに一般的な消炎鎮痛薬を薦められたりしたことなどは、医師であり、がんの専門医である唐澤さんにはストレスになったといいます。