In this photograph taken on July 31, 2017, an Afghan youth walks on a path at sunset on the outskirts of Herat./AFP PHOTO/HOSHANG HASHIMI

 私は企業の経営を心理的側面から分析して経営改善を行う経営心理士として、経営コンサルティングを行っている。その中でも人間のモチベーションに関するコンサルティングを行うことが多い。

 モチベーションの源泉となるのは欲求であるため、モチベーションを上げるためには人間が根源的に抱いている欲求にアプローチすることが効果的である。

 人間はいくつかの根源的な欲求を抱いているが、そのうちの1つに「世のため人のために役に立ちたい」という欲求がある。私はこれを貢献欲求と呼んでいる。

 人はこの貢献欲求を満たすことで、自分の存在意義を感じるという性質を持っている。貢献欲求は仕事を通じて満たすことができるが、仕事一筋の人生を送ってきた人は定年退職後、貢献欲求が満たされずに苦しむケースが多い。

定年後の長い人生

 これといった用事もない日々を過ごしていると、何らかの形で世間から必要とされたい、自分の力を発揮できる場がほしい、という思いを抱くようになる。これは切実な思いである。

 この貢献欲求を満たしたいという精神的な理由から、定年退職後もセカンドキャリアとしての仕事を得られるように50代から準備を始める人も少なくない。ただ、セカンドキャリアを得るのは精神的な理由のみならず、経済的な理由からも必要になる可能性は高い。

 今、日本人の平均寿命は男性が80歳、女性が88歳。

 例えば、定年延長せずに60歳で定年退職し、85歳まで生きたとすると、退職後に25年間生きるだけの資金が必要になる。

 仮に、生活費が夫婦2人で毎月35万円かかるとすると、年間で420万円かかり、それが25年間続くと、1億円以上が生活費のための資金として必要になる。

 これにさらに医療・介護関連の費用も支出として生じる。こう考えると、定年退職時の貯蓄と年金の額にもよるが、働かずに悠々自適の老後を送るということは決して簡単なことではない。

 そのため、定年退職後もセカンドキャリアを得て、ある程度の収入を得る必要性が生じることも十分にあり得る。