「乳がんになった身内が3人いて、3人ともホルモン剤だけで良いルミナルAタイプだったので、私だけ抗がん剤で治療することになったのは多少ショックでした。また、身内に乳がんが多いと遺伝性乳がんの可能性も疑われるため、その検査も行いましたが、陰性でした」。

 そして、抗がん剤を手術の前に行う術前化学療法を受けて乳がんを縮小させてから乳房温存手術と放射線療法を行い、ホルモン剤を5年間内服するという治療の計画を立てました。

薬に弱い体質で副作用に苦しんだ

 こうして、抗がん剤による術前化学療法が開始されましたが、唐澤さんはもともと薬の作用や副作用が出やすい体質でした。「例えばアレルギーを抑える抗ヒスタミン剤を飲むと強い眠気に襲われ、鎮痛剤や抗生物質では胃潰瘍を起こします。吐き気止めでは体のこわばりを起こし、CT検査のヨード造影剤にもアレルギーがあります。ですので、抗がん剤や支持療法の薬の副作用が出ることが予測されました」。

 唐澤さんが使用した抗がん剤のパクリタキセルにはアレルギー反応の副作用がしばしばみられるため、その対策としてパクリタキセルを投与する直前に抗ヒスタミン薬とステロイド(副腎皮質ホルモン)を投与します。そのため、抗ヒスタミン薬の副作用がまず心配でした。

 実際、初めて外来化学療法を受けた日は、「抗ヒスタミン薬を飲んでから30分後には立っていられないくらい体がだるくなり、パクリタキセルを点滴した後、どうにか帰り、その日は出勤できずに翌朝まで寝込みました。翌日は予定通りに出勤したものの、今までに経験したことのないだるさで、いつ倒れるかと思いましたが、立食の会合もどうにか乗り切りました」と唐澤さんは振り返ります。

 病院での診療、大学教員や学会役員としての仕事などがぎっしりと詰まっている中、外来化学療法を続けましたが、まず薬疹やしびれが出てきました。「薬疹は顔を除いて全身に広がり、かゆみと体のだるさが辛かったですね。しかし、見た目は普通ですし、普段通り勤務していました」。