日本式のオフィスは創造的な仕事に向かない
「たかがオフィス」と思われるかもしれない。しかし働き方改革と生産性向上を進めるうえで、意外と重要なのがオフィス環境の見直しだ。もしかすると日本企業にとっては、オフィス改革こそ当面の最重要課題かもしれない。
私は欧米をはじめ各国で企業のオフィスを見てきたが、大部屋で仕切りがなく、上司や同僚と顔を突き合わせて仕事をしているのは日本だけだ。どこの国でもたいてい管理職は個室に入り、一般の社員もパーテーションで囲われたブースのなかか、衝立で仕切られた机で仕事をしている。
たまには「日本式の大部屋主義を取り入れています」というところもあるが、隣席とは数メートルも離れていて日本企業とはまったく様相が異なる。ちなみにドイツやデンマークでは、個人が専有する最低限のスペースが法律によって定められている。
たしかに日本式のオフィスは単純な事務作業や人海戦術的な仕事には向いている。上司は部下の仕事ぶりを常に監視できるし、周囲の人といつでもコミュニケーションがとれる。新人は先輩に何でも聞いたり、見習ったりしながら仕事を覚えていくことができる。
しかし単純な事務作業や人海戦術的な仕事は、大半がコンピュータに肩代わりされた。それによってホワイトカラーの仕事の中心は企画、分析、判断、推理などの創造的、知的活動に移った。
そうなると日本式のオフィスは、メリットよりデメリットのほうが大きくなる。絶え間なく電話が鳴ったり、話しかけられたり、手元を覗かれたりすると仕事に集中できない。考え事をしたり、専門誌を読んだりしていると仕事をさぼっているように見られる。「きみヒマそうだな」と上司から雑用を押し付けられることもある。同僚の仕事を手伝わされるかもしれない。逆に忙しそうに電話をかけたり、パソコンのキーを叩いたりしているとがんばって仕事をしているように見てもらえる。