(文:青木冨貴子)
大統領の長男、ドナルド・トランプ・ジュニアは一家のなかでも変わり者といわれ、父が大統領に就任して以来、ワシントンを舞台に展開する政治の世界とは一線を引いてきた。まして、政権を揺るがすスキャンダルからはいちばん遠いところにいるはずだった。
そのジュニアが昨年の大統領選挙中、クレムリンとつながるロシア人弁護士との面会に応じたと『ニューヨーク・タイムズ』が報じたとき、多くの市民が唖然とした。7月8日付の同紙によると、会合はトランプ・タワーのジュニアのオフィスで開かれ、大統領の娘婿ジャレッド・クシュナー(現大統領上級顧問)と、当時選対本部長だったポール・マナフォートも列席したというのである。
「選挙中の(2016年)6月9日の出来事は、ロシア側とトランプの内輪サークルとの間の初めて確認されたプライベートな会合であった」
『ニューヨーク・タイムズ』は興奮を抑えるようにこう伝えている。昨年の6月9日とは、トランプが共和党候補指名を確実にした2週間後になる。
会合があったことをジュニアは認めたが、これは(ロシア人の子供の)養子縁組についての取り決めに関するものだった、と付け加えた。3人が会ったロシア人女性弁護士はナタリア・べセルニツカヤである。
自ら問題のメールを公開
ところが、翌9日の同紙によると、ジュニアは話を一転させた。彼はヒラリー・クリントンに不利な情報を提供するという約束で、ロシア政府につながるこの弁護士に会ったことを認めたのである。しかし、その会合についてはこうコメントした。
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