プロレスのような破天荒な言動で世界中でお騒がせ者となっているトランプ大統領だが、今年の1月20日に就任してから、早くも半年が立とうとしている。
大統領選の時点から「アメリカ・ファースト」を唱えていたトランプ大統領は、「TPP」から正式に離脱を表明し、移民制限の大統領令を乱発、気候変動対策の国際的枠組みである「パリ協定」から離脱するなど、国際的な枠組みへの否定的な言動ばかりが目立つ。国内では「オバマケア」見直しも失敗、さらには「ロシアゲート」が大統領弾劾に発展するかどうかの瀬戸際にある。
つまるところ、就任から半年がたった時点においても、本人が主張するほどには、これといった実績がほとんどないのが実態だ。おそらく大統領自身も、内心では焦りがあるのではないだろうか。どうも大統領というものは不動産開発ビジネスと違って自分の思うようにいかない、と。
米国大統領の権限は実はそれほど大きくない
米国大統領は強大な権力を行使できると見なされがちである。だが、実は権限は大幅に制約されている。「人工国家アメリカ」の設計図ともいうべき「アメリカ合衆国憲法」で規定されているのだ。
そもそも米国は三権分立の原則が徹底しており、しかも大統領の権限は議会によって大きく制限されている。議会を構成する議員は、タックスペイヤー(納税者)が選んだ代表だ(大統領の権限について、5月に上梓した拙著『ビジネスパーソンのための近現代史の読み方』でも触れたのでお読みいただきたい)。
トランプ政権が策定する政策も、その命運も、上下両院で議会多数派の共和党がどう判断するかにかかっている。大統領自身は今回は共和党から立候補したが、政策的には共和党との違いも目立つ。