韓国大統領、原発新設計画を白紙化 「ポスト原発の時代へ扉開く」

韓国南東部の古里にある原子力発電所で演説する文在寅大統領(2017年6月19日撮影)〔AFPBB News

 2017年6月19日午前零時。韓国南部の釜山(プサン)郊外にある古里(コリ)原子力発電所の1号基が稼働を終了した。韓国で原発の稼働が「永久停止」したのはこれが始めてだ。

 この歴史的な日に、文在寅(ムン・ジェイン=1953年生)大統領は、韓国のエネルギー政策の大転換を発表した。脱原発、脱火力発電だった。

 この日午前、文在寅大統領は、古里原発1号基前で開いた稼働停止記念式典に出席してエネルギー政策に関する演説をした。ある意味で歴史的な内容になった。

文在寅大統領の演説

 文在寅大統領は、大統領選挙公約で、脱原発、脱火力発電の政策を掲げていたが、就任早々に、これを宣言したのだ。

 文在寅大統領は演説で、「原発政策は全面的に再検討します。原発中心だったこれまでの発電政策を破棄し、『脱核』時代に進んでいきます。準備中である新規原発建設計画は全面的に白紙化します。原発の設計寿命は延長しません。現在、寿命を延長して稼働中である月城(ウォルソン)1号基(慶尚北道)については、電力需給の状況を見ながら可及的速やかに閉鎖します」と述べた。

 さらに、「現在建設中の新古里5、6号基については、安全性とともに、工程率と投資額、補償費用、発電能力などを総合的に考慮して、早い時期に社会的な合意を形成するようにします」とも加えた。

 つまり、設計寿命を迎えた原発は原則として破棄する。新規建設はしない。建設中の原発も建設を取りやめることもあり得る――ということで、原発依存からの決別宣言だった。

韓国最初の原発が永久停止

 古里原発1号基は、韓国で初の原発だった。1978年7月に竣工して以来、設計寿命にあたる40年を経過して「永久停止」になった。「脱原発」を掲げる文在寅大統領の就任に合わせたようなタイミングだった。

 韓国での原発導入は比較的早く進んだ。日本にも原発導入を呼びかけた人物として知られる米デトロイトエジソン電力のウォーカー・エル・シスラー社長(米原子力産業会議会長)が1957年に韓国の李承晩(イ・スンマン)大統領を訪問したのが契機だった。

 「朝鮮日報」によると、この席でシスラー社長は、ウラニウムを入れた箱を見せ「このウラニウム1グラムで石炭3トン分のエネルギーを生産できる」と説明したという。