2017年5月9日に投開票された韓国の大統領選挙で、第一野党の文在寅(ムン・ジェイン=1953年生)氏が圧勝した。少数与党であることを意識して第一野党(旧与党)から訪問するなど融和路線で政権運営をスタートさせた。
5月10日午前8時、韓国の中央選挙管理委員会は全体会議を開き、大統領選挙の開票が終了して文在寅氏が当選したことを正式に発表した。この瞬間に文在寅氏が大統領に就任した。
就任するや野党本部に
文在寅大統領はこれを受けて、韓国軍の李淳鎮(イ・スンジン)合同参謀本部議長に電話。北朝鮮軍の動向に万全の体制で備えるように指示した。さらに、歴代大統領や朝鮮戦争の戦死者らが眠るソウルの国立墓地を参拝した。
ここまではこれまでの大統領と変わらなかったが、その後の日程は異例だった。
国立墓地からまっすぐ向かったのは、旧与党でこの日を機に第一野党になった自由韓国党の党本部で幹部に当選の挨拶をした。その後、国会に移動して、各党の幹部を相次いで挨拶回りした。
韓国では、大統領が野党本部を訪問することなどまずない。国会さえ、ほとんど行かず、必要な場合は各党トップを青瓦台(大統領府)に呼んで話をするのが一般的だった。
まずは第一野党をというのは、今後の政権運営をにらんだ現実的な行動だろう。
朴槿恵(パク・クネ=1952年生)前大統領を巡る一連のスキャンダルの表面化と弾劾、罷免、さらに大統領選挙を経て、韓国は長期間、政治の空白と国内の激しい対立が続いた。
文在寅大統領は、当選が確実になった5月9日夜、ソウル市内で「選挙で争ったが一緒に手を携えて未来のためにともに前進していく」などと語り、「統合」を何度も強調した。
政治の混乱や対立に国民の間でも疲労感が漂っていた。「統合」はだから重要なキーワードだが、もちろん、実利的な意味もある。