中国、中東欧投資へ1兆円超の新規ファンド設立

ラトビアの首都リガで行われた第5回中国・中東欧諸国首脳会議で、新ファンドの持ち株会社発足を祝い、拍手する中国の李克強首相(左)とラトビアのマーリス・クチンスキス首相(前右)(2016年11月5日撮影)〔AFPBB News

 私は数カ月前までファンドマネジャーという肩書きだった。最近こそ「投資ファンド」という言葉は毎日のように新聞紙面で目にするようになった。しかし、私がファンドファンドマネジャーになった十数年前は、まだまだ黎明期でいわゆる有名なドラマのイメージが強かった。

 私はヌーベルバーグ(新しい波)というこのコラムの中で、現在の資本主義の限界に着目しながら、我が国における新しい「資本」、つまり志のある「志本(しほん)」の流れを紹介していきたいと思う。

 投資ファンド業界は、日本国内にこれまでなかった「資本」の流れを生み出した。私募ファンドと言われる公の市場を通さない資金調達などを含めると正確な統計を取ることは難しい。

 筆者調べによると狭義の投資ファンドであるプライベートエクイティファンド*1というカテゴリーでみると毎年5000億円強の大きな資本が、ファンドを通じて資本の再分配をする役割を担っている。

 これは2007年から2016年までの10年間の東京証券取引所における株式新規公開(IPO)時の平均調達額が年1300億円程度であることを考えるとかなり大きな金額だと分かる。

*1=主に未公開株式へ投資する投資ファンド

金融機関に借金するしか方法がなかった日本の中小企業

 最近では事業価値が2兆円とも言われる経営再建中の東芝の半導体事業売却の受け皿として投資ファンドの名前をよくニュースで耳にする。

 これまでは誰もがリスクを取りたがらなく資本の流入が滞ってしまった倒産企業や、既にピークを越えてゆるやかな衰退局面にある衰退事業に対して、新たな資本を注入し、再び輝きを取り戻すための活力を与えるという、新しい「資本の流れを生み出す」価値を提供してきた。

 なぜ我が国においてこのような投資ファンドという産業が成長してきたのだろうか。それは我が国の伝統的な資本の仲介役である金融機関の役割と関係している。

 我が国における企業の資金調達はどのように行われているのか。

 図(次ページ)の通り財務省の法人企業統計調査年報によると、企業活動の調達の内訳を示す貸借対象表の負債と資本の部合計に対して、大企業では23.4%、中小企業では実に29.8%を金融機関からの借入に依存している。

(*配信先のサイトでこの記事をお読みの方はこちらで本記事の図表をご覧いただけます。http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/49902)

 特に証券市場に上場していない中小企業においては、資金調達の手段が限られているため、経営者が身銭を切って出資するか、金融機関からの借入によって資金調達するかしか選択肢がほとんどなかった。

 このような金融機関からの借入による資金調達を間接金融と呼ぶ。間接金融に対して、資本による調達(主に株式を発行して調達する手法)を直接金融と呼ぶ。

 なぜ間接金融と呼ばれるかというと、銀行をはじめとした金融機関の多くは、預金という個人や法人が預けたお金を、企業の事業活動のために貸し出す(企業から見れば借り入れる)ため、金融機関を通じて間接的に資本の出し手である個人や法人から資金調達をするため、間接なのだ。