クルドの旗を掲げて歓喜する人たち

 イラクでは、クルド自治政府とイラク中央政府の緊張が続いている。

 9月25日、イラク政府の反対を押し切って、実施されたクルドの独立の賛否を問う住民投票の結果は、投票率が72%、賛成は92.7%だった。

 イラクのハイダル・アバディ首相は住民投票の結果を「破棄」するよう要求し、飛行場の封鎖や、銀行の凍結などの制裁に加え武力衝突も起きている。

 クルド自治政府は10月24日に声明を出し、さらなる暴力は双方にとって益をなさないとし、住民投票の結果を受けた独立への動きを凍結し、中央政府との対話を始めることを提案した。

 1か月前の住民投票とはいったい何だったのか。

クルド自治区とイラクの格差

 クルド自治区という形態は悪くはなかったということ。

 イラクの中で、バグダッド、バスラは、日本人が落ち着いて滞在できる場所ではない。テロの危険や誘拐の危険に絶えずさらされている。

 しかし、クルド自治区の首都アルビルは、第2のドバイと言われたこともあり、高級ホテルや、カフェ、ショッピングモールなども多く、安心してくつろげる。

 外国人の投資家や、バグダッドやアンバールから避難してビジネスを行っているアラブ人も多く、彼らが、消費を支えている。

 独立か否かを問われると、誰しもが理念としての「民族の自決権」から独立すべきだということになるが、実は、自治区というのが、トルコや、イランとも摩擦を起こさずほど良い形態であることは、大多数のクルド人が分かっていた。