津和野町は島根県南西部に位置する人口約7500人の山々に囲まれた小さな町である。
山陰の小京都と言われ、かつては森鴎外など偉大な思想家も輩出した藩校など歴史と文化を兼ね備え、多くの観光客でにぎわった時期もあった。
しかし、1970年代には1万5000人ほどいた人口も現在約半分にまで減少した。昨今は高校の存続も危ぶまれる状況となっていた。
こう聞かされると、人口の流出が止まらない中山間地の典型的な自治体という印象だが、現実は全く逆。町を活性化させる様々な取り組みが効果的に働いて、エネルギーに満ちた地域となっている。
過疎に悩む町から希望に満ちた町へ。その実現に大きな力となったのが、FoundingBase(東京都台東区)という2014年に設立された新しい会社だ。同社は人材育成と町づくりを両立させるために、佐々木喬志さんと林賢司さんの若い2人の共同経営者によって立ち上げられた。
彼らが過疎に悩む町と契約してやる気ある若者を地域おこし協力隊として送り込み、町を活性化させた第1号が津和野町なのである。
FoundingBaseが津和野町でまず取り組んだのが津和野町にある県立津和野高等学校の魅力化・改革だった。過疎化で定員割れが続いていた高校を魅力あるものにした結果、今年度は新入生の応募が倍率1倍を超え全校生徒数も209人までに回復している。
このほか、津和野町が抱える様々な課題を解決すべく協力隊のメンバーたちをサポートしてきた。その結果、地方自治体から活動費を受け取って1年から3年の任期で活動する地域おこし協力隊の期間が終了した後もそのまま町に残って起業する人が増えている。
この1年でも5人の若者が起業して定住した。彼らの熱心な活動に触れ、よそ者に冷たいのが常である日本の地方の人たちも変わってきた。自ら新しいことを始めようという人や地域おこし協力隊の人たちと共同して何かを始めようとする人たちが出てきているのだ。
東京や大阪、京都などの大都市で大学を卒業した高学歴の若者が津和野町に集まり、地域の問題点と可能性を徹底的に検討して、日本全体あるいは世界の目線で津和野町をとらえる。そして何をすれば津和野町の素晴らしい資源を生かせるかを考える。