驚き、面白がることが「意欲」を引き出す

 しかし、「褒める」という言葉を使う限り、どこを褒めたらよいのかという混乱がどうしても生じてしまう。それに人間は、ついつい外側の結果、つまり100点取ったとか営業成績がトップだったとか、「すごい結果」に目が行くので、それを褒めてしまいがちだ。そしてそれで失敗する。

 そこで私は「褒める」のではなく、「努力・工夫に驚き、面白がる」という表現を使うことにしている。

「そんなに努力されたんですか。そのときはつらかったでしょう」
「よくこんな工夫、思いつきましたね! 面白い!」

 そんな風に努力や工夫に驚かれ、面白がられると、人間は「次はどんな工夫をしてやろう」「やっぱり頑張った甲斐があったな。これからも頑張ろう」と、意欲が湧いてきたり勇気づけられたりする。

 次にはもっと努力し、工夫するだろう。驚き、面白がってくれることが、何よりの追認になり、勇気と意欲をかきたてるからだ。

 そう。大切なのは「意欲」だ。次々に現れる難題をどうクリアしていくか。それには、立ち向かう意欲と、なんとしても突破してやるという努力と、その努力を形にするための工夫が必要だ。

 意欲、努力、工夫。この3つの要素を兼ね備える人は、生涯進歩し続け、途中で失敗があっても再び立ち上がり、しかも失敗から何かを学びとって、次のステージへと進むだろう。

 近年、教育界で注目を集めている「GRIT(やり抜く力)」だ。

 それを部下に身につけてほしいなら、「努力、工夫に驚き、面白がる」ようにしてみよう。少しずつGRITが身につき、パフォーマンスがどんどん上がり、結果もついてくるだろう。