ただ褒めさえすればいいってもんじゃない。

「子供や部下は褒めて育てるべきだ、そうでないと意欲を失ってしまう」という意見と「褒めたらつけあがってちっとも動かなくなるから、褒めるべきではない」という意見がある。

 真っ向から矛盾して聞こえるが、私はどちらの意見も半分正しいと考えている。そして、残り半分を誤るから、望ましくない結果(つけあがったり意欲を失ったり)になるのだと考えている。

 褒める場合は、褒める「場所」が極めて大切になってくる。それは、拙著『自分の頭で考えて動く部下の育て方』(文響社)でも指摘したことだが、「その人の“外側”ではなく“内側”を褒める」ということに注意が必要だ。

“外側”だけを褒めても・・・

 たとえば、子供がテストで100点を取ってきたとする。

 そこで「100点! すごいね、えらいね、やればできるんじゃん!」と褒めたとする。

 すると、次のうちのどちらかの状態に陥る。

「僕はやればできる」というわりには努力をしなくなり、「俺はまだ本気出してないだけ、出せばすごい」と言い続けてやろうとしない。つまり「つけあがった」状態になる。

 あるいは、褒めても励ましても「うん・・・うん・・・」と気の進まないような、気重そうな返事が返ってくるばかりで、意欲を失った状態になってしまう。

 これはなぜだろうか? それはその子供の「外側」を褒めてしまったからだ。