中国の携帯電話の普及を見れば、その答えは明白です。
携帯電話とクリーンエネルギーの類似点
中国工業・情報化部によりますと、中国の2009年末時点での電話の普及総件数は10億6100万戸でしたが、そのうち、携帯電話が占める割合は70%以上と、固定電話台数を圧倒的に凌いでいます*43。
その理由は、先進国を中心とした携帯電話の普及拡大によって端末機価格が下落したことと、中国全土に電話回線をくまなく網羅するより、携帯電話の基地局を要所要所に設置した方が、経済性が高いからです。
電力システムの世界にも、電話システムと全く同じ経済性理論が成り立つのではないでしょうか。
今後、さらなるクリーンエネルギー製品の普及による規模の経済性と技術革新の実現によって、製品コストが継続的に下落することが予測されます。このコストダウンのメリットを新興国は享受できるのです。
つまり、新興国は、太陽光発電や風力発電などを手頃な価格で自宅や地域に小型分散型電源として導入し、地域内でエネルギーの需給バランスを取るマイクログリッドを構築した方が、先進国の電力供給モデルである、大型発電所と長距離送電線網を建設するよりも経済性が高くなるでしょうし、しかも、環境にやさしいのです。
ですので、先進国が固定電話のインフラを構築した後に、次世代通信として携帯電話を導入したのとは対照的に、中国が固定電話を飛び越え、一気に携帯電話を普及させたように、アジア・アフリカの新興国が、化石燃料をベースにした大型発電・長距離送電システムを飛び越え、一気に小型リニューアブル分散型発電・マイクログリッドシステムへ移行する可能性は高いのではないでしょうか。
以上、COPを通じて国際社会が温室効果ガス削減の取り決めに合意できなくとも、国や地方政府が打ち出す独自のグリーン政策および経済性に裏打ちされたアジア・アフリカを中心とした新興国のクリーンエネルギー需要によって、世界のグリーン化は止まらないのです。
*42 = Copenhagen's true effect yet to be seen, Financial Times
*43 = 中国携帯電話普及率56.3%、7.47億ユーザー突破 japan.internet.com
■これまでの連載とこれからの予定(変更の予定あり)
- 第1部 クリーンエネルギーで世界の覇権を取れ!
- 第1章 今のままでは日本は絶対に勝てない
- 第2章 100年に1度のエネルギー産業大転換
- 第2部 クリーンエネルギーの実像
- 第1章 化石燃料より安くせよ、激化する世界競争
- 第2章 ソーラー、風力、バイオの問題点と解決策
- 第3章 IBM、グーグル、インテルなどが続々参戦
- 第4章 ITの次はエネルギー産業の雄を目指すグーグル
- 第3部 グローバルビジネス最前線
- 第1章 大躍進する中国、投融資額では世界を圧倒
- 第2章 次世代の覇権目指し、手を握る米国と中国
- 第3章 日本の起業家たちよ、ナスダックを目指そう
- 第4章 GEとウォルマートの決断がもたらしたインパクト
- 第5章 米中間選挙で環境は後退? 雇用を最優先へ
- 第6章 技術革新がもたらした「シェールガス革命」
- 第4部 クリーンエネルギーと日本
- 第1章 先進国を飛び越えグリーン化する新興国
- 第2章 日本の戦略
- 第3章 世界競争、待ったなし
あとがき