日本で世界一のワイン作りを目指す池野美映さん。第1回では日本のリゾートを世界有数のワインリゾートにしようと目論む星野リゾートの星野佳路社長との出会いをお送りした。
2回目の今回は、時計の針が反時計回りに何度も回転して、池野さんがワイン作りを勉強するためにフランスへ飛ぶ。(以上、編集部)
地中海に面したモンペリエはまぶしかった
タラップを降りると視界に飛び込んできたのはいかにも真夏の青い空だった。乾いた風が頬の横を通り過ぎ、痛いほどの日差しが長旅で疲れた体に容赦なく照りつける。
つい数時間前にトランジットしたパリでは、灰色の雲で押しつぶされそうな低い空と冷たい雨のせいでタートルネックのセーターにコートを羽織る人々が行き交っていたというのに。
教科書の中の言葉としてしか理解していなかったのだが、地中海性気候とはこういうことなのかとこの時、初めてその意味を知ったような気がした。
2001年9月、私はパリから南へ750キロの南に位置する地中海沿岸の地方都市・モンペリエに降り立っていた。パスポートと少しの不安とたくさんの開放感をスーツケースいっぱいに詰め込んで。
モンペリエは、中世の面影が多く残されている美しい町並みの観光地で、世界的に有名なイタリアからスペインに続くサンティアゴ・デ・コンポステラの巡礼路の宿場町として栄えた街である。
夏になればバカンス客が所狭しと押し寄せる
そして夏になると、南仏の陽光を求めるバカンス客が押し寄せるリゾート地でもある。
街の中心部から車を20分走らせると地中海に面した小さな港町がいくつも点在し、海岸にはブイヤベースや牡蛎料理をメーンとしたレストランが立ち並んでいる。
レストランのテラス席では魚介料理にあう酸味のしっかりしたピックプール・ピネ種の白ワインやロゼが各テーブルに並び、友人や家族とゆったりと時間をかけておしゃべりを楽しみながら食事をする光景が散見される場所である。
ワインはいずれもモンペリエ近郊で醸されたこのラングドック地方のスペシャリテ(特産)である。これらを目当てにノマドと化したパリジャンたちは毎年、夏になると南下してくるのだ。
そしてこの街で1つ忘れてはならないのが、大学が密集する学園都市としてのアカデミックな顔だ。
とりわけヨーロッパ医学の発祥の地である医学部とその医学の源となった隣接するフランス最古の植物園が知られている。