つまり本当はお客様の事前期待を掴まなければ、サービスを提供することはできないのです。

 この観点で自社サービスを見つめ直した時に、「今まで本当にサービスを提供することができていたのだろうか」と自問自答することになります。もしかして、お客様の事前期待を掴まずに、一方的に提供者の都合を押しつけてしまっていなかっただろうか。良かれと思ってやったことはお客様の事前期待に合っていただろうか・・・。

 りそなホールディングスはこういった自問自答を通して、「我々はサービスを提供することすらできていなかったかもしれない」という危機感を抱きました。そして、「事前期待に合ったサービスを提供する」という「常識」を身に付けるべく、改革を進めていったのです。

サービスの内容を議論する前にやるべきこと

 最近、様々な業界でサービス改革が積極的に進められるようになってきました。しかしその多くは、「どんなサービスを提供したらいいのか」「どんなサービスが売れるのか」といった点ばかりにフォーカスしています。サービスはお客様と一緒につくるものなのに、お客様不在の議論や取り組みが意外に多いのが実情です。

 お客様の事前期待に合っていなければ、それはもはやサービスですらありません。どんなサービスを提供するかを議論する前に、「我々はどんな事前期待に応えるべきなのか」を明らかにするべきなのです

「我々はサービス業である」

 サービス改革は、ビジョンと危機感と使命感をもって、この言葉にどれだけ向き合えるかにかかっているのかもしれません。