銀行を訪れるお客様の多くは、窓口で「長い待ち時間」や「煩雑な手続き」について不満を感じています。りそな銀行では、それらをなくす「3ない(待たない・書かない・ 押さない)」と、銀行側の事務を効率化する「3レス(ペーパー レス・バックレス・キャッシュレス)」を並行して進めることで、お客様の待ち時間を半減することができたといいます。さらに事務スペースを約2分の1に圧縮して、その代わり、お客さまのためのスペースを2倍に拡大しました。また、従来は事務に携わっていた従業員の約4割について、お客様業務に関われるように担当業務の内容を変更しました。

 これらの改革によって、お客様にとって「単なる事務手続きの場」から「相談の場」へと変わることができた、というのが受賞の理由です。

いつのまにか「お客様不在」になっているサービス

 この事例から、他の業界で役立ちそうなポイントを紐解いてみましょう。ここではサービスの中身そのものではなく、なぜ、りそなホールディングスがこのようなサービス改革を実現できたのか、その改革の進め方に着目してみたいと思います。

 ご存知の方も多いと思いますが、りそな銀行は2003年に公的資金による多額の資本注入を受けました(注:2015年6月に、ピーク残高3兆1280億円の公的資金をグループとして完済しました)。この時の経営危機が変革のきっかけとなりました。

 しかし、サービスを改革することは簡単なことではありません。サービス改革を成功に導くためには、「ビジョン」と「危機感」と「使命感」が必要です。りそなホールディングスのサービス改革でカギになったのは、特に「危機感」でした。

 りそなホールディングスでは、「金融サービス業」として生まれ変わるため、お客様目線でのサービス改革を進めました。そのキーワードは、「りそなの常識は世間の非常識」というものだったそうです。

 りそなには、どんな「常識」が欠けていたのでしょうか。

 そもそもサービスはお客様と一緒に作るものです。しかし日本の多くのサービスは「いいサービスは喜ばれるに決まっている」と思い込んで、自分たちが勝手に作ったサービスを一方的にお客様に押し付けてしまっています。

 いくら自分たちが良かれと思ってやったことでも、お客様の“事前期待”に合っていなければ「サービス」ではありません。それは、「余計なお世話」や「無意味な行為」であり、ときには「迷惑行為」ですらあるのです。