フランソワ・ミッテラン元大統領(1916~1996、在任期間1981~1995)は、任期終了直前になって隠し子の存在と前立腺がんにかかっていることを公表した。先日(10月13日)、その隠し子の母親との愛の往復書簡『アンヌへの手紙』(ガリマール社)が発売された。
「フランス語を知り、条件法過去が使え、隠喩的色彩を添え、文章力に長けた我々の最後の大統領」(左派系週刊誌「ヌーヴェル・オプセルヴァトール」)として、本書は高い評価を受けている。
隠し子の存在や前立腺がんを長年にわたって隠していたのは、フランスの国家元首としては一種の裏切り行為である。だが、それよりも、フランス語の複雑な文法の時制と隠喩を駆使して立派な文章を書ける能力の方が高く評価されているというわけだ。
来春の仏大統領選を前に、11月末には最大野党の右派政党「共和党(LR)」と中道右派の候補者7人による共同の公認候補を選出する予備選が実施される。各候補は、“文筆家”としての技量を競うかのように次々に政策をアピールする著作を発表している。新聞やテレビに取り上げてもらい、メディアに露出する機会を増やそうという狙いも、もちろんある。
典型的エリート、ジュペ元首相の文章は?
最新の各種世論調査で予備選の1位獲得が予想されるアラン・ジュペ元首相は、2015年夏から2016年5月までの間に、自らの政策を紹介する3冊の著作を発表した。