北朝鮮、「新たな」SLBM発射実験の映像 信ぴょう性に疑問

北朝鮮の朝鮮人民軍海軍第167軍部隊の潜水艦第748号〔AFPBB News

 今年9月9日、北朝鮮は5回目の核実験を行い、核弾頭の爆発実験に成功したと初めて発表した。同日の北朝鮮の朝鮮中央テレビは、「今回の実験では放射性物質の漏出現象は全くなかった」とし、「国家の核兵力の質・量的な強化措置は継続される」と表明している。

 北朝鮮はメガトン級水爆の開発配備まで核開発を行うのであろうか、その目的は何か、北朝鮮にそのような能力はあるのか、放射能漏れの恐れはないのか?

 これらの問題について、米国での核実験場の事例などを参照して、努めて実証的に検証する。

1 北朝鮮の核爆弾の出力と型式

 北朝鮮が5回目の核実験で達成した出力は25キロトン前後とみられ、戦術核弾頭のレベルを出ていない。北朝鮮は、小型化、軽量化,多種化が進み、ミサイルに搭載できる核弾頭の開発に成功したとしている。また、4回目の核実験では「水爆の実験に成功した」と自称している。

 しかし、仮にそれらが事実であったとしても、対都市攻撃用の核弾頭としては出力が小さすぎる。もし北朝鮮が最小限抑止段階の核戦力建設を目指しているとすれば、テラー・ウラム型の水爆実験に成功しなければならない。

 なぜなら、最大数百キロトン級の出力しかない戦術核弾頭では、敵の軍事目標、港湾などの点目標に対する攻撃には使えるが、敵国の都市を攻撃して、産業や人口に「耐え難い損害」を与えることは困難である。

 最小限抑止の水準に達するには、中英仏が保有しているメガトン級の水爆の保有が不可欠である。

 北朝鮮が、メガトン級の水爆を保有するうえでの最大の障害は、そのような大出力を持つ水爆を製造できるのか、またメガトン級の水爆の核実験場が確保できるかという課題である。

 北朝鮮が自称する「水爆」と通常言われる水爆とは異なっているかもしれない。北朝鮮が実験に成功したと称する「水爆」とは何か、その定義をまず明らかにしなければならない。

 核融合反応を利用した核爆弾をすべて「水爆」と称するならば、この意味で実用化されている水爆には、少なくとも3つの種類がある。

 現在一般的に水爆と称されるのは、2段階式のテラー・ウラム型の水爆である。この型の水爆は、以下の手順で爆発させる。

(1)1段目としてまず原爆を起爆させ、それにより大量に発生するx線をケースに反射させる。
(2)そのエネルギーを利用して、2段目の核融合物質に核融合反応を起こさせる。
(3)その核融合反応のエネルギーで核分裂物質の核分裂を引き起こさせる。

 これらの分裂―融合―分裂という過程を通じて、従来の原爆の数百倍から数千倍の出力を発生させることができる。

 一般に、1段目の原爆にはプルトニウム239を使用する。2段目の核融合物質としては、重水素化リチウムなどが使用される。

 2度目の核分裂物質としては、核分裂の連鎖反応の起こりにくいウラン238を使用するが、出力を上げるためにウラン235を使用したり、鉛を使用して出力を半減させることもできる。

 X線のエネルギーが核融合物質にどのように伝わるかについて定説はない。X線の圧力によるとの説、X線によりケース内のポリスチレンなどの充填物がプラズマ化してエネルギーが伝わるとする説、緩衝材のタンパ―などが剥がれてエネルギーを伝えるとする説などがある。この中では、タンパ―剥離説が最有力である。