注:この記事が書かれた後、2016年7月からミャンマー側の経済的理由で運行は中止されています。
名物車両が次々と
次々に出現するコンドミニアムや高級ホテル、そして、日増しにひどくなる渋滞を緩和すべく主要な交差点に架けられる高架道路――。
映画の早送りシーンのように目まぐるしく表情を変えるヤンゴン市街地の南側に、明らかに趣の異なる一角がある。
この国の重要な経済動脈でもあるヤンゴン川に沿って東西に走るストランド通り沿いには、1908年に貿易会社のオフィスとして建てられた赤レンガ造りの中央郵便局や、瀟洒な雰囲気をたたえたクリーム色のストランドホテル、かわいらしい三角屋根の見晴塔を構えた港湾局など、英領植民地時代の面影を色濃く残す建物が並び、どこかノスタルジックな雰囲気さえ漂っている。
近年、このストランド通りが日本の鉄道ファンたちを魅了している。
ブームが始まったのは、2014年12月。前年、日本で大ブームとなったNHK朝の連続ドラマ「あまちゃん」で一躍脚光を浴びた三陸鉄道の「あまちゃん列車」が、日本での役割を終えてミャンマー国鉄に譲渡されたのだ。
もともとヤンゴン港でコンテナを積み下ろしするために引かれていた貨物線を利用し、第二の人生をスタートさせたあまちゃん列車の運行開始に併せ、現地でも一般家庭向けにミャンマー語吹き替え版「あまちゃん」が無料で放映されたことから、一部在留邦人を中心に、ブームに静かな火が付いた。
さらに、2016年1月からは、この国で独立後初めての「路面電車」がこの通りを運行するようになり、さらなる話題を呼んでいる。
新たな「顔」として一躍注目を集めているのは、広島電鉄の車両だ。現在はまだワーダン駅とリンザタウン駅の間、6.5キロだけの運行だが、最終的にはバンライ駅やバズンダン駅まで乗り入れ、環状鉄道に乗り換えることも可能になるという。
開業から1カ月が経った1月下旬の朝、ワーダン駅から「電車」に乗ってみた。仲睦ましげなミャンマー人の親子連れや、のんびりと車窓を眺める初老の男性を眺めながら揺れに身を任せているうちに、あっという間に電車はリンザタウン駅に到着。
そのまま出発したワーダン駅まで折り返すことにして座っていると、出発直前に一眼レフを首から下げた3人連れの日本人男性グループが、さらに次の駅では、スマホを握った日本人女性が乗り込んできた。