そもそもプレイヤーに求められる資質とリーダーに求められる資質とは異なる。
リーダーとしての資質があるかどうかを深く考慮することなく、プレイヤーとしての資質が優れているから出世させるという判断は、先の例のように会社に悲劇をもたらすことがある。
先の例の場合は、問題となる人間が自ら会社を辞めてくれたのでまだ良かった。問題となる人間が会社を辞めず社内に居座り続けた場合、他の従業員のモチベーションはさらに下がり、会社はボディブローのようにダメージを受け続け、結果として内部崩壊に至ることもある。
リーダーに求められる資質には多くのものがあるが、その中でも私欲と公欲のバランスはとりわけ重要であると考える。
私欲と公欲のバランス
人間の欲には私欲と公欲とがある。私欲は自分がいい思いをするために生じる欲求であり、公欲は自分以外の人のためを想って生じる欲求である。
あの人に喜んでもらいたい、部下にもっと幸せになってもらいたい、みんなのために貢献できることをしたい・・・。
こういった見返りを求めることなく生じる欲求が公欲である。そして、公欲の強さは責任感をもたらす。
人間である以上、必ず私欲はある。「高い給料をもらいたい」「高く評価されたい」という私欲が原動力となって、人一倍仕事を頑張った結果、プレイヤーとして優れた実績を残すことも多々ある。
ただ、その私欲と公欲のバランスがリーダーには求められる。
公欲に比べて私欲が強過ぎる人は、損得で物事を考え、自分にメリットがないことは組織のためになると分かっていてもやろうとしない。部下に対する当たりが厳しく、自分にメリットがないのであれば自ら進んで部下を育てようとはしない。
議論になると組織のために建設的な答えを出すことよりも、自分の意見を通すことに執着し、感情的になりやすい。問題が起きた時は組織としてどう対応するかということよりも、自分に非がないということを先に話し始める。