NHKは東京・渋谷にある放送センターの建て替え計画を発表した。それによると1700億円かけて今の放送センターを順次建て替え、2036年に新しい放送センターが完成するという。今の建物は最も古いものでは築50年以上たっており、耐震性などに疑問がある。
これを更新する計画は以前からあり、今のセンターを売却して別の場所に新しく建てることが検討されていたが、適地が見つからず、今の建物を使いながら20年もかけて建て直すことになった。しかし2036年にNHKは存在するのだろうか?
「テレビ」は20年後も存在するのか
まず問題は、今の形の「テレビ」がいつまであるのかということだ。今の若者の部屋には、テレビはない。彼らの通信手段は圧倒的にスマートフォンで、1日中テレビを見るのは老人だ。この傾向が逆転することは考えられないので、2036年にはテレビ放送が存在しているかどうかが疑問だ。
もちろん動画を見る「モニター」はなくならないだろう。しかし今でも日本以外の先進国では、テレビ番組はケーブルテレビやインターネットで見るのが普通で、放送局が特定の周波数を独占する制度はなくなりつつある。
BBC(イギリス放送協会)は10年前からiPlayerというネット配信を始め、ヨーロッパ最大のネットメディアになった。BBCの「ライセンス料」は、テレビとネットを問わずBBCの視聴者すべてに支払いを義務づけ、「BBCはもはや放送局ではない」と宣言した。
デジタル放送にするとき、BBCは放送設備と電波を通信会社に売却してデジタル化の費用をまかない、その設備をリースバックして使っている。テレビ局が占有している電波は通信にも共用でき、技術はメーカーが運用すればいいので、NHKが技術部門をもつ必要はない。メディアが多様化した時代に、NHKだけがテレビ・ラジオ合わせて7チャンネルも持っているのも多すぎる。
したがってNHKの建て替え基本計画に書かれている放送設備や電波は民間に売却し、NHKは「情報棟」のニュースセンターなどの業務に特化すればいい。NHKのインフラと電波なら1兆円以上で売れて、建て替えコストはゼロになるだろう。