驚異のたし算

 無限級数とは無限の項のたし算のことです。これまでの連載で様々な無限級数の風景を紹介してきました。

 sin、log、e、πたちの正体が無限級数であることが、ニュートン、オイラーらの挑戦によって解き明かされてきました。

 前回の連載「オイラーゼータ誕生物語」では、長年懸案であった無限級数の問題──バーゼルの問題が28歳のオイラーによって解決される様子を描きました。

 結果にπが描き出される風景、そして誰も見たことがない華麗な証明に世界は激震しました。

 かくしてオイラーは、バーゼルの問題の背後にある原風景──ゼータ関数(オイラーゼータ)に到達しました。

 オイラーはゼータ関数を徹底的に研究し始めます。そして描き出された衝撃のたし算をご覧頂きましょう。

 これが、私がゼータ関数を“ウルトラたし算(UT:Ultra Tashizan)”と呼ぶ理由です。特にこのたし算をUT1と名付けることにしましょう。

驚異のたし算の思い出

 私がこのたし算を知ったのは20歳のころでした。その衝撃は、私の運命を変えるまでの威力を持っていました。

 私の大学は2年生で所属学科を決めるシステムになっており、私はアインシュタインに憧れて物理学科に進もうとしていました。

 その私が出会ったのがラマヌジャン(1887-1920)です。彼が描いた2つの絵を見た瞬間、私の中で何かが変わりました。