これに対して、ゴーン、益子両CEOは、「両社の関係は2011年に軽自動車の共同企画開発を始めた時から始まっており、これまで益子CEOとの個人的な関係を含めて、様々な付き合い方を考慮してきました。そうした中で、自然な形で今回の決断となりました」と、抽象的な表現に終始した。

 また、資本提携で期待されるシナジー効果として挙げられたのは、「ASEAN地域でのSUV、ピックアップトラックのプラットフォーム共通化」「EV技術の共有」といった“正論”ばかりである。緊急会見は「単なる儀式」という印象だった。

 これまで両社の世界各地での事業を現場で見てきてた筆者からすると、両社の真意は他にあるように感じる。

 日産にとっての最大のメリットは、国内販売の約3分の1を支える軽自動車事業において、現在よりもさらに三菱自工に対する影響力を強め、製造原価をコストカットして利益を拡大させられることだ。とてもシンプルだが、これが最大のメリットだろう。

 日本特化型の商品である軽自動車は、乗用車メーカーにとって、実需面では「やらざるを得ない」が、実利面からは「やりたくない」分野だ。だが、今回の燃費不正によって、日産が三菱自工から被った損害に対する賠償が、製造原価のコストカットに直結することになるのは間違いない。つまり、日産は今まで以上に低コストで軽自動車をつくれるようになるというわけだ。

 日産としては、自動車市場の縮小が避けられない日本において軽自動車事業の延命を図ために、今回の出資は「相対的に安い買い物」なのだ。

12日の緊急会見で握手するゴーン、益子両CEO

三菱自工のPHEVをOEM提供

 もう1つの要因が、三菱自工のプラグインハイブリッド車(PHEV)が日産にOEM供給されるようになることだ(現在三菱自工はPHEVとして「アウトランダーPHEV」を販売している)。