見渡す限り、真っ平らなゴビの高原は、世界の果てまで続いているようだった。
ウランバートルからダランザドガドまで南へひとっ飛び、私たちはゴビ砂漠のど真ん中にいた。ゴビは砂漠とはいえ礫(れき)砂漠で、あまり砂漠らしく見えない。ステップの草原から草をところどころむしり取ったような禿げ方をしている。遠くに草や岩が見える礫砂漠の方が、砂の砂漠より逆にだだっ広く見えるものだ。ここは草原と砂漠の境目だ、ステップだ。そう私は思った。それもそのはず、ゴビとはモンゴル語で砂礫を含むステップのことを意味するらしい。
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私は学生時代の友人たちと現地合流して、一緒にゴビの奥深くまで旅をすることになっていた。草原を突っ切って、今夜はモンゴルの移動式住居・ゲルに泊まる。もうずっと昔からモンゴル人が遊牧生活のために設営して、たたんでを繰り返してきたゲルに泊まる。草原を移動できる公共交通機関もないので、空港までゴビのモンゴル人たちが迎えに来てくれていた。迎えのバンは2台あり、1台は小ぎれいに磨かれたトヨタの4WDだったが、もう1台はプスプスと音のする壊れかけのバンで、どこからどう見てもまあポンコツである。じゃんけんだったのか罰ゲームだったのか、どのように二手に分かれたのかよく憶えていないが、私はポンコツ車の方に乗る羽目になった。
もちろん予想通りトヨタの4WDの方がよくステップを駆け、私が乗ったポンコツのバンは常に遅れをとった。埃っぽい未開のステップで先頭に立てないということが何を意味するかというと、前を走る車の土ぼこりが常に自分たちの車を襲ってくるということだった。