中国・インドという新しいエコノミックパワーの出現によって、米国のイノベーション・エコシステムは岐路に立たされているのです。

失敗を恥とする日本ではベンチャーは生まれにくい

 また、逆の視点から見れば、前回紹介した中国のR&D強化戦略も、技術を先進国から輸入するのではなく、自国の優秀な人材を先進国から逆輸入することによって機能する可能性はあるかもしれません。

 それでは翻って日本はどうでしょうか?

 日本版イノベーション・エコシステムを確立することができるでしょうか? 筆者は、正直難しいと思います。

 日本の単一民族国家としての国の成り立ち、失敗を恥とする文化、寄らば大樹の陰的な志向などを考えると、日本ではなかなか世界をリードするイノベーションは生まれにくく、それを育むベンチャー精神も根づいているとは言えません。

 また、イノベーションを事業化へと導く役を担うベンチャーキャピタルや株式市場といった経済インフラが期待通り機能していないことは、前に触れた通りです。

日本にこだわらず米国のシステムを活用すべき

 無理にイノベーション・エコシステムを日本で構築しようとせず、むしろ、既に上手く機能している米国のイノベーション・エコシステムを利用することを考えるべきではないでしょうか。

 例えば、開発資金を必要としている日系ベンチャー企業は、日系ベンチャーキャピタルから資金を得て東証マザーズ上場を目指すのではなく、米ベンチャーキャピタルと組んでナスダック上場を狙う発想です。

 また、この米国イノベーション・エコシステムを活用するアイデアは、日系大企業にも適用されます。えてして大企業は、技術開発を含めて自前主義に陥りがちです。多くの大企業がR&D部門に大きな予算と多くの従業員を投入し、自社技術の開発に取り組んでいます。

 しかしながら、どれだけの会社がR&Dに事業として取り組んでいるでしょうか?