前回の連載では、イノベーションによる革新技術の開発を核にした米国のクリーンエネルギー戦略を紹介しました。
半導体、通信、バイオ、ITなどの先端技術で圧倒してきた米国
その中で、例えばARPA-Eの技術開発補助金プログラムに3700件もの応募のあるイノベーションの源泉はどのように生まれるのでしょうか?
今回は、米国においてイノベーションが創造される社会システムとそのメカニズムについて考察します。米国が世界をリードしてイノベーションを生み出してきた実績は、歴史が証明しています。
シリコンバレーを中心に、半導体、テレコミュニケーション、バイオテクノロジー、ITなどの先端技術やビジネスモデル開発の領域で様々なイノベーションを起こし、米国は新産業の興隆に貢献してきました。
その背景には、以前紹介した優れた技術や事業アイデアを持った起業家にリスクマネーを提供するベンチャーキャピタルと、彼らが出資したベンチャー企業が株式上場(Initial Public Offering: IPO)を果たし、高い投資リターンの実現を可能にする、ナスダック(NASDAQ)のような高い流動性を持つ資本市場の存在があります。
ここで、ナスダックと日本のベンチャー企業向け新興株式市場を比較してみます。
活力あるナスダック、枯れる一方の東証マザーズ
日本でも1999年に東証マザーズ、ナスダック・ジャパン(米ナスダックの撤退後、大阪証券取引所ヘラクレスへ変更。その後2010年10月にヘラクレスは大阪証券取引所に吸収合併されていたジャスダックと統合され新ジャスダック市場となる)と相次いでベンチャー企業向けの株式市場が開設されました。
しかしながら、その規模や流動性は、いまだにナスダックに遠く及びません。
ナスダックには約3100社が上場している一方、東証マザーズの上場企業数は185社(2009年12月末時点)にとどまっています。また、ナスダックと東証マザーズのIPO実績を比較しますと(図31)、ナスダックのIPO機能の大きさとその効果が一目瞭然です。
ナスダック* | 東証マザーズ | |
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上場(IPO)会社数 | 142 | 23 |
IPOによる資金調達総額 | 189億ドル(1兆7000億円) | 542億円 |
*ナスダックのデータは2007年1月-11月末
米国では、技術・アイデアを提供する起業家、リスクマネーを提供するベンチャーキャピタル、高い投資リターン機会を提供する株式市場が、相互に上手く機能しているのです。