エネルギー業界で言えば、例えばノーベル賞物理学者でもあるスティーブン・チュー エネルギー省長官は中国系米国人、前回紹介したARPA-Eのトップはインド出身です。

新型電池のベンチャーを次々創業する中国系、インド系

 また、リチウムイオン電池のA123システムズや燃料電池のブルームエナジーなどの有力エネルギーベンチャー企業の創業者も、中国系米国人やインド出身者です。エネルギー業界も米国の多様性社会を反映しています。

 この米国のイノベーションの源泉である社会の多様性は、まず中国では存在し得ませんし、日本やヨーロッパ諸国などほかの先進国にもない、米国特有のものと言ってもいいでしょう。

 ただし、今後も米国がイノベーションの分野で世界をリードし続けるとは限りません。その理由は、米国のイノベーションシステムに多くのタレントを提供してきた中国やインドの台頭があります。

 今までは、中国やインドからの留学生や研究者として渡米してきた多くの人材は、新しい技術や事業アイデアを開発した後もそのまま米国にとどまることを選択し、米国で創業し、結果的に米国社会に貢献してきました。

 しかし今や、米国よりも経済成長の著しい母国に帰った方が、よりチャンスが大きいと判断する人たちも出てきました。

世界の5指に入るサンテックはオーストラリア帰りの中国人が起業

 その最たる例が、太陽電池企業サンテック創業者の施正栄氏です。彼は、米国ではありませんがオーストラリアのニューサウスウェールズ大学で博士号を取得し、当大学の太陽光発電工学最先端技術センターで薄膜太陽電池の研究を行い、現地太陽光発電企業で取締役を務めた後、2001年に中国でサンテックを創業しました*29

 その後サンテックは、2005年にはニューヨーク証券取引所に上場を果たし、今や世界のトップ5に入る太陽電池メーカーに成長しました。

 2006年の米フォーブス誌の世界の富豪ランキングで、施氏は中国人としてトップの40位に選ばれ、中国に帰って起業しても、アメリカンドリーム、いやチャイニーズドリームを実現できる時代になったことを証明したのです。

 これからもアメリカンドリームは色あせることなく世界で輝き続けることができるか、その結果、世界中の優秀な人材を引き付け、引き留め続けることができるか?