起業家・ベンチャーキャピタル・株式市場が三位一体となって有機的に結びつき、革新的な技術や事業モデルをビジネス化する社会インフラを、米国のイノベーション・エコシステムと命名します(図32)。

 今や米国産業界の巨頭として燦然と輝く、マイクロソフト、アップル、アマゾン、グーグルなどの企業は、このイノベーション・エコシステムを介して、ベンチャーから米国経済のメインストリームに組み込まれていったのです。

 この米国のイノベーション・エコシステムが、他国に比べて、いかに上手く機能しているかを示すデータがあります。

クリーンエネルギーベンチャーへの投資は米国が世界を圧倒

 ピュー・チャリタブル・トラスト(Pew Charitable Trusts)によると、米国の2009年のベンチャーキャピタルおよびプライベートエクイティによるクリーンエネルギーベンチャー企業への投資総額は39億ドル(3510億円)で、第2位のブラジルの7億ドル(630億円)を大きく引き離して、圧倒的な第1位の座を誇っています(図33)。

 米国は世界のクリーンエネルギーベンチャー投資を凌駕しています。

 一方、残念ながら日本はトップ10にもランクされていません。先ほど紹介しましたベンチャー投資のイグジット(Exit)の機会を提供する株式市場の状況に鑑みますと、仕方のない結果とも言えます。

図33: ベンチャーキャピタル・プライベートエクイティによるクリーンエネルギー投資 2009年

順位 国名 投資金額
1 米国 39億ドル / 3510億円
2 ブラジル 7億ドル / 630億円
3 Rest of EU-27 6億ドル / 540億円
4 イギリス 5億ドル / 450億円
5 カナダ 2億ドル / 180億円
5 ドイツ 2億ドル / 180億円
5 中国 2億ドル / 180億円
8 フランス 1億ドル / 90億円
8 インド 1億ドル / 90億円
出所: Pew Charitable Trusts : G-20 Clean Energy Factbook

 では、この米国のイノベーション・エコシステムの源泉である、技術や事業アイデアのイノベーション自体は、どこから生まれてくるのでしょうか?