ヤンゴン中央駅でにこやかに撮影に応じてくれた親子

 列車のスピードが上がり、運行本数が増えることによって、両都市間の所要時間が大幅に短縮される一方、現在のように列車の前後を横切ったり、線路沿いに歩いたりすることがどれだけ危険になるか、今回撮影した映像とCGを駆使して訴える予定だ。

「プロマネ」修行と広報

 前出の詳細設計調査が終盤を迎え、調査団が図面の仕上げやコストの積算業務などに追われる中、カメラと三脚を携え日本からやって来た撮影クルーたち。

 現地入りに先立ち、スケジュールを組んだり、ミャンマー国鉄から許可を得たり、現地滞在中は同行して列車の出発・到着時刻や停車位置、プラットフォームを確認するなど、撮影をアレンジ面で支えたのは、(株)オリエンタルコンサルタンツグローバルの西尾陽平さんだ。

 2014年4月に同社に入社した西尾さんは、同調査のスタートに合わせ、同年7月より「業務調整」として参画。以来、プロジェクトオフィスの設営から秘書・ドライバーの採用、現地再委託業務の契約など、多岐に渡る業務をこなしてきた。今回の動画撮影も、現地のコーディネーション役を自ら買って出たという。

 卓越した事務能力と落ち着いた言動から、若いながらもメンバーから一目置かれる存在だ。そんな西尾さんの大学時代の専攻は、交通工学。早くから海外で働くことを希望し、アジア開発銀行(ADB)のインターンとしてフィリピンに半年滞在したり、インドで単身、調査を行ったりしたこともある。

 トルコで建設中のボスポラス海峡トンネルを見学し、プロジェクトマネジャーに話を聞いたことがきっかけで、「施工する側でも、発注する政府側でもない、第三者的な立場である開発コンサルタントの面白さ」に開眼し、結果的にそのプロマネがいる会社に入社した。

マンダレー駅にほど近い市場の一角。線路脇で女性が魚を売っていた

 現在は、学生時代の専攻とかけ離れた、いわゆるロジ業務に追われることも多いが、「施主との交渉や事務的な調整を含め、プロジェクトマネジメント自体に興味があるので平気です」と西尾さん。ゆくゆくはプロマネになりたいという夢がある。

 近年、開発コンサルタント業界も高齢化が進み、未来を背負う若手人材の育成が喫緊の課題になっている。

 関連業務経歴の年数が大 きなウエイトを占める評価方法など制度上の問題がその背景にあるとはいえ、自社の事業方針や社風 に合った有望な人材の育成は、企業にとっても業界全体にとっても 最も重要かつ大きな「投資」であり、制度のせいばかりにもしていられない。

 そのため、最近は、場合によっては自社負担してでも若手社員を業務調整として調査に参画させるケースが広がっている。