2015年1月に1バレル48ドル台でスタートしたWTI原油先物価格は、3月に同43ドル台に下落した後、6月には同61ドル台に上昇した。しかし、供給過剰感が市場関係者の間に広く浸透したため、再び下落に転じる。その後、同50ドル前後で一進一退を繰り返したが、12月のOPEC総会が近づくにつれ同40ドル台に下落し、総会後は同30ドル台半ばで推移している。
米国が原油輸出解禁に踏み切った背景
12月18日、米国政府が石油危機以来40年ぶりに原油輸出の解禁を決定した。このことも世界の原油市場の供給過剰ぶりを象徴する出来事だった。
米国は第1次石油危機直後の1975年以来、原油輸出を原則禁止してきた。オバマ大統領はこれまで「温暖化対策に逆行する」として、共和党が推進する輸出解禁には反対する姿勢を示していた。だが、オバマ政権が求める風力・太陽光発電への税制優遇継続に共和党が理解を示したことから、輸出解禁の容認に転じた。
石油業界にとって念願だった輸出解禁により、米エネルギー調査会社IHSは「2030年までに原油生産は日量120万バレル増加する」と試算している。すぐに輸出が広がるとの見方は少ないが(1月第1週に60万バレルの米国産原油が欧州へ輸出されることが決まった)、米国内の原油の供給過剰状態を世界市場に転嫁させる今回の措置で「世界の原油価格はさらに下がるのでは」との観測が広がり、年末までにリーマン・ショック後の最安値(1バレル32.4ドル)を更新する可能性も指摘されている(12月21日の北海ブレント原油価格は約11年ぶりの安値を更新した)。
WTI価格は同35ドルの水準だが、硫黄分が高い中東産価格は既に同20ドル台で取引されており、世界の原油生産の3分の1以上が採算の採れない価格となっている(12月15日付ブルームバーグ)。第4四半期の米国の石油・ガス会社の破綻件数は9件となり、四半期ベースとしてはグレートリセッション(1930年代の大恐慌)以来の高水準に達しており、2016年にはさらに増加する可能性がある(12月25日付ブルームバーグ)。