前回、「イスラム教徒はクリスマスを祝うか?」と尋ねたわけですが、現在のシリア・アサド政権の支持基盤は少数派のアラウィー派と呼ばれる勢力で、彼らはクリスマスを祝うムスリムです。
厳密なイスラム教徒はこのアラウィー派を認めず「亜イスラム」視する人も少なくありません。
ISIL(イラク・レバントのイスラム国)が正統派ムスリム・スンニー由来の原理主義であるのに対して、アサド政権はクリスマスを祝う「名目シーア派」の実質は亜イスラムです。
また、レバノンはマロン派キリスト教徒+ドゥルーズ派=これまた相当外れたイスラム少数派であり、一方、空爆している有志連合はカトリックであれプロテスタントであれクリスチャンです・・・。
「クリスマスを祝うか?」という問い1つで、実は現下の最も危険な国際情勢を見分けるリトマス試験紙にもなる、こうした柔軟さはリベラルアーツの力が支えるもので、年が明けましたらそれらの話題に踏み込んでいく予定です。
クリスマスの語源
さて、皆さんは「クリスマス」の語源、ご存知ですか?
唐突な質問で怪訝に思われるかもしれません。英語で書くとクリスマスは「Christmas」。これを分解すると
Christmas=Christ+mas(s)
つまり「キリストのミサ」ということになります。「キリスト」とは救世主の意、ミサは聖餐式、つまりイエス・キリストが十字架に架けられる前の晩、使徒たちと共にした「最後の晩餐」に倣って行われる聖なる食事の儀式。
「降誕した救世主に連なるべく聖なる食事を共にする祝いの祭り」というのがキリスト教から見た「クリスマス」と言って(キリスト教も各派様々ですが)大きく外れないと思います。
「聖なる食卓に皆で集まってお祝いしよう、一緒にご飯を食べよう」
何ともいい話です。また、そこに招かれない人、あるいは招かれることを拒否する人々がいれば、共同体の中で微妙な関係、もっと言えば反感や対立の元にもなることでしょう。