鄭周永(チョン・ジュヨン)氏が築いた「汎現代家企業」の売上高の合計は、韓国のGDPの25%に達するという(写真は現代造船)

 かつて韓国最大の財閥だった現代グループの創設者である鄭周永(チョン・ジュヨン)氏の誕生から2015年11月25日で100年を迎えた。書店には、同氏の業績を伝える本が並び、産業界でもその並み外れた行動力と挑戦精神を懐かしむ声が高く、ちょっとしたブームになっている。

 次の成長分野が見つからず低成長時代に入った韓国では、鄭周永氏の「突破力」を懐かしむ声が高い(2015.11.26付「高度成長と民主化、世界化から一転IMF危機 評伝 金泳三大統領時代と激動期の韓国経済」参照)。

韓国財閥トップ勢ぞろい

 2015年11月24日、ソウルのグランドハイアットホテルで、鄭周永氏の誕生100周年記念式典が開かれた。

 ホスト役は長男格の鄭夢九(チョン・モング=1938年生)現代自動車グループ会長や6男で現代重工業グループのオーナーであり国会議員を長年務めた鄭夢準(チョン・モンジュン=1951年生)氏など家族たち。

 かつて現代建設の最高経営責任者(CEO)を勤めた李明博(イ・ミョンバク=1941年生)前大統領や、李在鎔(イ・ジェヨン=1968年生)サムスン電子副会長、崔泰源(チェ・テウォン=1960年生)SKグループ会長、具本茂(ク・ボンム=1945年生)LGグループ会長など韓国を代表する経済人が勢ぞろいした。

李明博前大統領の回想

 李明博前大統領はこう挨拶した。

 「資本も技術も経験もないあの時代に、鄭周永氏のような人物がここに生まれたことは、われわれの経済だけでなく国全体にとっても大きな幸運だった。現場重視でいつも現場責任者と同じ姿勢だった。鄭周永氏の創意力と挑戦、失敗を恐れない開拓精神は、今のデジタル時代、ベンチャー時代にも十分に通じるものだ」

 筆者は、1990年に東京で鄭周永氏にインタビューをしたことがある。同氏が75歳だった時だ。

 事業構想について次から次へと語るその「熱さ」に圧倒されたが、それ以上に記憶に残るのが、その「笑顔」だった。