韓国の金泳三(キム・ヨンサム)元大統領が2015年11月22日、死去した。87歳だった。韓国の民主化に大きな役割を果たした。大統領在勤中(1993年~98年)は韓国経済にとっても激動期だった。
金泳三氏の経歴や、韓国の民主化に果たした役割については、日本でも大きく報じられた。
ここでは、特に、「経済」とのかかわりについて振り返りたい。まずは個人的な体験から述べたい。
今から10年少し前。何度か、ソウルの金泳三氏の自宅を訪れたことがある。いずれも大統領退任から3~5年経過した頃だった。
いつも決まって午前10時に来るように指定され、お昼をご馳走になった。
前職大統領の自宅だが、普通の住宅街にある普通の一戸建てだった。お昼を一緒した食卓も5人も座れば一杯だった。
想像より質素な自宅、昼食
質素な生活も、民主化運動の旗手として多くの人をひきつけた理由の1つだった。
間近で話してみると、いばらない、権威主義的でないことも印象的だった。失礼な質問をしても、笑いながら何でも答えてくれた。
金大中(キム・デジュン=1925年~2009年)元大統領に対するライバル意識は驚くほど強く、話題が及ぶといつも語気が強まったのも印象的だった。
強烈な権力への執着心や、大統領在任期間中の実績などについて、韓国でもさまざまな評価がある。それでも、大きな特徴の1つは、やはり「人が集まった」ことではないか。その後、袂を分かった例もあるが、金泳三氏ほど、韓国で有力政治家を「作った」人はいなかったのではないか。