アメリカの住宅リフォーム市場は30兆円と言われている。この数年、その巨大市場を狙ってウェブサイトでリフォーム情報とオンラインコミュニティを手がけるITベンチャーが次々と設立され、業界に旋風を巻き起こしている。

 その代表格が「Houzz」と「Porch」だ。Houzzは昨年4月9日、日本にも上陸したのでご存知の方も多いだろう。

IT化が遅れていた30兆円のリフォーム市場

 アメリカ人は生涯に平均5~6回家を買い替えると言われるが、売買の対象となる8割近くが中古物件で、中古市場が成熟しているのが特徴だ。

 中古住宅は備え付けの電気製品も含め、一つひとつの設備を積み上げる形で丁寧に査定されるので、リフォームして価値を上げて売ろうとする人もいれば、古い家を購入して、自分の好みにリフォームする人もいる(リフォームは和製英語で、英語ではリモデリングとかホーム・インプルーブメントと言われている)。

 リフォームに対する熱意は日本の比ではない。例えば、住宅街で著名なインテリアデザイナーがコーディネイトした物件が売りに出され、オープンハウスになっていたら、それを見て参考にしようと、家の中に入りきれないほど近所の人たちが見学に来るほどだ。

 日本に比べればリフォーム大国のアメリカだが、他業界に比べてIT化は遅れていた。建築家やデザイナー、リフォーム業者探しは口コミに頼るしかなく、手間や時間がかかる上、結果に満足しない人も多かった。

 そのような潜在的なニーズに注目して生まれたのがHouzzやPorchなど、住宅デザインやリフォームに関するプラットフォームだ。どちらも建築家やデザイナー、施工業者などの専門家を消費者に紹介するマッチングを行っている。

起業6年で世界7か国に展開するHouzz

 2009年に設立されたHouzzのアイデアは2006年に遡る。CEO兼共同創業者のアディ・タタルコ氏と同社社長で夫のアロン·コーエン氏の2人は、パロアルトに築60年の家を購入した。

 当時アロンはeBayのエンジニアで、2人はフルタイムで働きながら、2人の子供を育てつつ、雑誌を買い込んでデザインを考え、知り合いにプロを紹介してもらうという従来の方法で家のリフォームを実施した。だが、労力と時間がかかったわりに、施工者に希望を十分伝えることができず、夢に思い描いた通りの家にはならなかったと言う。