韓国最大の財閥、サムスングループの苦悩が続いている。サムスンソウル病院で 中東呼吸器症候群(MERS=マーズ)の感染者が続出している。たたでさえ頭が痛いのにサムスン物産と第一毛織の合併に反対するヘッジファンドによる攻勢も強まり、苦悩の6月になっている(2015年6月11日付「MERSとヘッジファンドの直撃受けるサムスン」参照)。
「今週末が流行のヤマです」「流行は終息の兆しが出ています」――。ここ数週間、韓国のニュースはこう報じ続けるが、MERSはなかなか終息の兆しが見えてこない。
ソウルで暮らして、「感染の危険」を感じることはない。会社では日常業務が普通に進んでいる。会食の約束などもまったく変わらない。筆者の周辺にも「感染者」が出たという話を聞いたことはない。
中国人観光客激減で静かなソウル観光スポット
ただ、大きな変化も目に付く。ソウルの中心部、明洞(ミョンドン)から中国人観光客が見事に消えてしまった。日中は歩くのにも不自由するほど大勢の中国人団体観光客が押し寄せ、道路には観光バスがあふれていた。それが、ぱたりとなくなった。MERSで観光旅行のキャンセルが続出しているからだ。
多くの出張者は予定通り韓国に来ているが、一部で出張キャンセルも増えている。
地下鉄では、これまでほとんど見かけなかったマスクをする乗客が目に付く。百貨店、飲食店はどこに行っても空(す)いている。週末の高速道路は、本当に渋滞がなくなった。できるかぎり人ごみの多い場所への外出は控えようという雰囲気があるからだ。