引っ越しをするので机を整理していたら、6年前の新聞切り抜きが出てきた。見出しは「日本での『韓国型ショック療法』をウォールストリートは望む」。産業界の守護神を自任する米国の大新聞の記事だ。
この記事は2002年3月に米国の首都ワシントンにあるジョンズ・ホプキンス大学高等国際問題研究大学院(SAIS)で開催されたフォーラムで、著名ヘッジファンド関係者らが次のように主張したことを紹介している。「(GDP比35%に上る日本の金融セクターの持つ不良債権の処理を)進める唯一の道は、株式市場に資産価格を自由に決めてもらうことだ。自由市場で不良債権を売れ。それだけだ」「もし不良債権が売り飛ばされれば、それらの不良債権は再びパフォーム(収益を生む)するようになる」
なんとも勇ましい口調だ。市場に不良債権の価格を決めさせよ。それが「失われた10年」の日本の金融セクター再生のために不可欠だ。2002年当時、ウォールストリートの日本関係者の多くはそう主張していた。
この記事には、当時の米大統領経済諮問委員会(CEA)のグレン・ハバード委員長が2002年3月に訪日した際、東京で行った発言が紹介されている。同委員長は、不良債権を銀行から整理回収機構(RCC)に移すことは役立たずだと断じた上で、次のように述べている。「企業の破綻なしには、不良債権問題は解決できない」
そしてハバード委員長は、日本の金融当局が2002年2月8日に導入した株式の空売り規制の見直し策を批判する。「アセットマーケットを人工的に跳ね上げるために規制を使うのは、賢明とは言えない」「それは、市場によって送られた貴重な信号をゆがめるだけだ」
しかし、日本の金融当局が導入した空売り規制の見直しは、その当時米国で課されていた空売り規制とほぼ同内容のものを改めて導入したに過ぎなかった。当時、日本の株式市場には、いわゆる欧米のハゲタカファンドが脱法まがいの空売りで、不良債権を安価に買い叩いているとの噂が絶えなかった。実際、2002年3月20日にはメリルリンチ日本証券など3社が政令違反の空売りで行政処分を受けている。