オーストラリアのデザイナーが焼いた有田焼(徳永陶磁器)

 400年の歴史を誇る有田焼がかつてのような輝きを取り戻すにはどうすればいいのか。前回は星野リゾート卒業生である南雲朋美さんの奮闘ぶりをお伝えした(「星野リゾート卒業生が有田焼再興に奔走中」)。400年の伝統にリゾート経営のノウハウを吹き込むというのも新しい挑戦と言える。

 一方、有田焼はそもそもグローバルな意識があったからこそ発展してきた。その原点に帰ろうという取り組みも始まっている。有田に外国から陶芸に興味のある人たちを呼び込もうというのである。

 その1人が徳永陶磁器の徳永隆信社長である。

 同社は廃校になった小学校の校舎を利用して磁器を作っているが、大きな小学校だっただけに土地や建物に余裕がある。そこで、その一部を利用して海外から焼き物を体験したいという人を呼び込もうと言うのである。

有田焼を体験したい欧米人

 「日本に海外から観光に来る人が増えていますが、ありきたりのコースでは満足せず、歴史と日本の技を学びたいというニーズは間違いなく高まると思います。実際、有田に来た欧米の人たちからは、次は陶芸を体験したいという声が出ています」

 そういうニーズがありそうなら、施設を作ってしまえと徳永社長は考えたのだ。

 一方、海外の人たちの興味を引きそうな焼き物を焼いてみせることも重要である。日本の伝統的なデザインにこだわっているだけでは市場は拡大しないからである。

 徳永社長はオーストラリアから1人のデザイナーに来てもらい、新しいデザインの焼き物にも挑戦している。中にはかなり奇抜なデザインもあり、伝統を重んじる人からは批判される危険性もある。

 しかし、徳永社長は「新しいことは初めは批判されて当然。みんながびっくりするようなものでなければ変化しませんよ」と話す。