同報告書によれば、中国人のイメージが特に悪いのはイタリア、スペイン、フランス、英国、南アフリカなど最近在留中国人が急増した先進国が多く、特に、商業上の「ルール無視」や生活面での「悪しき習慣」が中国人のイメージを損ねているという。

 さらに同報告書は、「中国人はグループ同士で対立することが多く、現地社会に十分溶け込んでいない」「一部少数による犯罪が中国人全体のイメージを傷つけている」とも述べている。

嫌中感情は今後も続く

 なるほど、中国政府も問題点を結構よく理解しているではないか。それではなぜ、この種のトラブルがなくならないのだろう。

 一部の反中・嫌中派識者は海外で中国人が嫌われる理由として、中国人に特有の自己中心、ご都合主義、独善、責任転嫁、人間不信、土匪性などを挙げている。しかし、これは必ずしも正しいとは思わない。

 「ジコチュウ的」振る舞いは決して中国人の専売特許でなく、むしろ開発途上国共通の国民性だ。この点は以前詳しく述べた(中国株式会社の研究:その24)ので、ここでは繰り返さない。

 海外に進出する中国人が嫌われる最大の理由は、ズバリ、その物理的人数の多さだと思う。

 これだけの数の中国人が海外に出ていけば、彼らは昔のような国際派のエリートよりも、外国に行くのが初めての人たちが圧倒的に多いはずだ。

 1970年代の日本人ビジネスマンや農協の海外パックツアーのことを思い出してほしい。日本人ですら外国でトラブルを起こさないノウハウを体得するのに何世代もかかったではないか。

 今中国が経験しているのは、40年前に日本人が経験したことと基本的に変わらない。このことに中国人自身が気づくまで、「嫌中感情」は今後も世界中で続くだろう。これが、今日の中国海外進出の悲しい現実である。