ちなみに、この事件直後、ツイッターでフィリピン当局に同情的なコメントをつぶやいた俳優のジャッキー・チェンがネット上で炎上し、チェンは全面謝罪に追い込まれたという。香港の反フィリピン感情がいかに強いかを示す興味深いエピソードだ。
世界中に広がる嫌中感情
フィリピンだけではない。中国にとってより深刻な問題は、こうした現象が近年世界中で起きていることだろう。嫌中感情の高まりは、今や日本や韓国だけの専売特許ではない。
例えば、ベトナムだ。最近の報道によれば、現在ベトナムでは中国人男性とベトナム人女性の国際結婚が問題になっている。
結婚適齢期の女性が圧倒的に不足する中国では、ベトナム人女性との結婚斡旋(という名の「人買い」)がビジネスとして成立するからだ。
実際に、ベトナムでは中国人の国際結婚ブローカーが逮捕されるケースも少なくないらしい。最近ベトナム人の間で嫌中感情が高まり、逆に中国人はネット上で「ベトナム人は恩知らず」などと反発している。
このような例はほかにもたくさんある。特に目につくのは韓国、ベトナムのような周辺国ではなく、むしろパプアニューギニア、アフリカ、欧州など近年中国が新たな進出先、投資先として多くの中国人を送り込んでいる地域でのケースだ。
現地文化を尊重しない中国人
これらに共通するのは、進出した中国人が「現地の文化を尊重しない」ことだと言われる。最近の報道の中から、外国に進出する中国人の典型的な行動パターンをいくつか抜き出してみよう。
●国外で華人、華僑に絡むトラブルが発生した場合、かなりの案件は中国人自身が招いた問題である
●進出する華人・華僑は、作業員からトイレットペーパー、インスタント食品に至るまで、すべてを中国から持ち込み、現地の労働力や製品を購入しようとしない
●数年後、華人・華僑は自分の家族・親戚を大勢呼び寄せ、安い中国製品の販売を始め、地元経済を支配しようとする
●中国側は、個人、企業ともに法律意識が欠けており、商業道徳にも違反する
●現地社会と良好な関係を保てず、現地の風俗習慣にも無頓着である
●管理が粗暴で、現地人従業員をないがしろにする傾向がある
といった具合だ。もちろん、中国政府も決して手をこまぬいているわけではない。昨年末には、海外の華人・華僑問題を担当する中国国務院・僑務弁公室が「海外同胞の文明的イメージを樹立するための調査研究」と題する報告書を作成し、海外に進出する中国人に警鐘を鳴らしている。