日本の高齢化率(総人口に占める65才以上の人口の割合)が25%を超えた。人類が経験したことがない超高齢社会に突入したと言っていい。
特に深刻なのは東北地方だ。中でも福島県浜通り地方は、2011年の福島第一原子力発電所の事故後に若年層が避難したため、高齢化が急速に進んだ。その結果、南相馬市の高齢化率は震災前の25.9%から33.2%に上昇した。
これは予想されている2040年の東京の高齢化率(33.5%)と同レベルだ。東北地方は東京の将来を映す鏡であるという見方もできる。実に多くの学ぶべき点がある。
急激な高齢化は社会に様々な問題をもたらした。特に深刻なのは高齢者の社会的孤立、そして孤独死だ。仮設住宅を中心に、死後1週間以上経ってから見つかる例が後を絶たない。
福島民報の取材では、福島県内の仮設住宅で孤独死したとされる数は、2014年3月31日時点で計34人に上るという。
高齢化先行地区としての貴重な経験
これは福島だけの問題ではない。早晩、全国でも問題となるだろう。高齢化とともに独居高齢者も増加しているからだ。
国立社会保障・人口問題研究所の推計では、2035年には2010年(498万人)に比べて50%増加(762万人)するという。特に増加率が高いのは東京圏(71.0%)や宮城県(74.7%)などの東日本や沖縄県(92.3%)だ。高齢化先行地域として福島県浜通りの経験は参考になるかもしれない。
私は昨年から福島県浜通り地方の相馬市にある相馬中央病院で勤務している。東日本大震災を機に、医学生、研修医として何度か浜通りに来ており、現在は内科医として、浜通りの高齢化に危機感を覚えている立場だ。
福島県相馬市では、高齢の被災者のために「井戸端長屋」(以下「長屋」)と呼ばれる集合住宅を造成した。これは東日本大震災で家を失った高齢者のために建設された復興住宅だ。
設計図は震災の翌月から作成されており、1号棟は震災から約1年後の2012年5月に竣工した。現在は5棟58戸が建設され、57人が入居している。そのうち52人が高齢者、38人が一人暮らしだ。