日本人は世界を西洋と東洋に分けて考えがちだ。実際には、西洋でも東洋でもない国が世界の大半を占めているし、また西洋、東洋それぞれの中に大きな多様性がある。しかし、明治維新以来西欧文明に追いつくことを目標に近代化を進めてきた日本では、西洋と東洋の二分法で世界を見る発想がいつのまにか社会に根を張ってしまった。
この発想から脱却するうえで、メキシコはとても良いきっかけを与えてくれる。
メキシコは東洋でも西洋でもない国である。東洋の文明は、稲作に支えられて発展した。西洋の文明は小麦を主食とし、さらに牧畜に支えられて発展した。一方メキシコでは、トウモロコシを主食とする文明が発展した。
メキシコのアステカ帝国は1521年にスペインによって滅ぼされたが、多くの先住民文化はその後も存続し、ギターなどの西洋文明の産物を取り入れながら新たな発展を遂げた。現在のメキシコは、メスティーソ(スペイン人と先住民の混血)が国民の60%、先住民が25%を占める多文化共生社会であり、日本からの移民の子孫も暮らしている。