当たり前の原則を自社に当てはめてみる

 「こんな当たり前のことを教えてもらっても何の役にも立たない」という流通業者が多いかもしれない。しかし、とち亀物産の上野真歳社長は、この事実に行き当たるまで何度もトライ&エラーを繰り返している。そして、消費者は知らないだろうと思われる生産情報をしっかりと説明するようになってから、みるみる業績が上がっていったという。

 このように経営の基本的な部分に気づいた人と素通りした人とでは、当然ながら行動も違えば結果も違ってくる。

 以前、私が経営セミナーで講師をしていた時に、「先生の話は分かりやすいのですが、うちの会社は特殊なので、どうも・・・」という反応があった。その人はおそらく、すべての場面で自社にぴったりの話を求めているのであろう。

 しかし、様々な業種の人が参加しているセミナーでは、どうしても、どこの会社にも共通するような一般的なたとえ話が多くならざるを得ない。そのため聞き手側には、一般論や原理原則を自社に当てはめる応用能力が求められる。

 一見、当たり前に思える話を自社や自分に置き換えて理解しようとしなければ、どんな理論や知識も、目の前を素通りするばかりである。1つの原則や理論を当たり前のこととして見過ごすのではなく、自社や自分の仕事に当てはめると何が起きるのかという想像力、そのとき自分ならどうするのかという応用力が経営の成否を分けると言っても過言ではない。

これからの農家に求められるのは売る工夫

 現在、政府による農協改革が進められているが、日本の農業が突き当たっている問題も、農家が農産物を作るだけで売る方法を真剣に考えないことに根本原因があるのではないだろうか。